不自由、そして、その先へ。
かつて、不自由だったこと。そして、そこから一気に 自由になれたこと。
きこえない人生を歩むわたしにとって、生涯にわたって大切にしたい「生きる」テーマです。
声を、思いを、ききたい。一心に耳を傾けているのに、思うようにはききとれない。悔しい思いを重ねながらも、ある日わたしは気づきます。きこえないことは、不便ではあれ、不自由ではないということを。
もし耳では上手にききとれなくても、目で、からだで、音の響きや相手の思いを感じ取り、受けとめることができる。
なーんだ、わたし、もう十分幸せだったな。
そう気づけたとき、自分自身を「できない」「不自由」という縛りから解き放ち、人とのコミュニケーション、ダンス、英語、仕事・・・「自分なりに」「自由に」そして「全力全開で」なんでも楽しむことのできる人生が始まったのです。
不自由で息苦しかった日々。あのとき、「できない」「難しい」とガチガチに硬直していた自分がいて、今もガチガチまではいかないけれどたまにパリパリ程度には固まる自分がいて。でも、そういうゆらぎや息苦しさの中にいるときがあるからこそ、人は、自分の真ん中にある「大切なもの」「ゆずれない思い」「進みたい場所」「深呼吸ができる空間」を一層ハッキリクッキリ見出していけるのではないか。そんな気がしています。
2021年現在、新型コロナウィルスについて、世界各国で徐々にワクチン接種も進んでいますが、日本にいるわたしたちには、他者と一定の距離を保つといった制約が、求められています。
耳がきこえないわたしは、当初、この平常ではない生活を、人々がマスクをしているために読唇でのコミュニケーションさえままならない、なんとも不便な日々だと受けとめていました。
ある晴れた日、ふらりと散歩に出かけたときのこと。
太陽光に反射して、キラキラとゆらめく街中の清流。その傍らを、小さなキャリーバッグを両手で押しながらのんびり歩くおばあさん。談笑しながらコンビニに入る、スーツ姿の男性二人組。ベビーカーの子どもに話しかけながら歩く女性。
一時的ではあるものの、一様にマスクをつける人々のすがたと、コロナ以前から変わらずにあるおだやかな街の光景。それを眺めながら、ふとこんな思いが胸にわいたのです。
「ああ、今、わたしたちはみんなで “不自由”を共有しているんだ」
国境や言語といった境界を越え、多様なひとびとが一律に直面している困難。
それは、長い人類の歴史でみるとほんの一瞬のできごとですが、私はこの「誰ひとり例外なく、共通の”不自由”を味わっている(そして味わっていた)」という事実は、これから先わたしたちが、変化の波のなかで生きていくうえで、かけがえのない財産になっていくと信じています。
数多の違いを越えて共有した困難があるということは、共通の「肌で感じた体感覚」「目にした景色」「努力してもどうしようもない不自由」な時間とその思いをともにした、ということですから、大小さまざまな別の困難に直面したとき、お互いにすぐに通わせられるなにかがそこに生まれるきっかけとなり得るのではないか、と。
不自由だったこと、そして、そこから自由になること。とき放たれること。
きこえない不自由は、いつしかかけがえのない自由な人生に変わりました。
このWebサイトでは、私の、耳にした音色、見ている景色、感じている世界、そうして得られたさまざまな経験、そこから授かった知恵や感動などを、少しまじめ?な記事からゆるいブログにまで、おにぎりのようにぎゅぎゅっと愛情をこめてお届けします。
わたしの”今”を生きる動力になった、さまざまな出会いと、ひとのぬくもり、やさしさ、愛情。
その力が、今また、別のだれかの”今”を生きる力につながることを願い、つづっています。
ご縁に感謝をこめて。Yuki
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